日本の沖縄には、『寄留民(きりゅうみん)』ということばがある。寄留民とは、明治維新前からの先祖の土地を離れて住んでいる人のことを言う。日本本土の米軍基地の土地(軍用地)が、ドイツと同じように、ほとんど国有地(87%)であるのに対して、沖縄の軍用地は40%が私有地、37%が県・市町村有地、国有地は23%しかない。
Schlagwort: Prof. Takashi Namba
Vortrag: 日本の地域社会の見えない壁:沖縄の山原(やんばる)を事例として (Prof. Takashi Namba, Kommentar: Daisuke Nagahama)
日本の沖縄には、『寄留民(きりゅうみん)』ということばがある。寄留民とは、明治維新前からの先祖の土地を離れて住んでいる人のことを言う。日本本土の米軍基地の土地(軍用地)が、ドイツと同じように、ほとんど国有地(87%)であるのに対して、沖縄の軍用地は40%が私有地、37%が県・市町村有地、国有地は23%しかない。沖縄本島北部の山の軍用地は、多くが共有地で、コミュニティ(本土では町内会・自治会、沖縄ではシマ)が管理・運営している。これらのシマでは、多いところでは年間2億円以上の収入(借地料や補助金)がある。収入を活用して、シマが自治体(市町村)と同じような規定と組織を持ち、絶大な権力を持つ。ただ、多額の収入のために、シマのメンバーシップが厳格に決められている。戦後シマに引っ越してきた人は、シマの仲間に入れない。寄留民には資格が無いのだ。まさに、コミュニティの中に見えない壁が存在する。この発表では、日本に古くからあるムラ制度について説明したうえで、現代沖縄のコミュニティを事例に、日本の地域社会の中にある見えない壁について議論する。 難波孝志(Takashi Namba)の紹介 難波孝志は、現在、大阪経済大学 情報社会学部の教授である。大学院 経営情報研究科の研究科長を務めている。専門は、都市・地域社会学である。都市社会や農村社会のコミュニティ問題について、国家や自治体と地域社会の関係、コミュニティ内部の人間関係に焦点を当てて、研究を行ってきた。主な著書として、難波孝志(編), 2020, 『米軍基地と沖縄地域社会』, シリーズ 沖縄の地域自治組織1<北中部編>, ナカニシヤ出版, Takashi Namba, 2020, ‘Comparative Study on the Consensus – Building Process of the Conversion of Closed Military Bases in Germany…